近未来小説:2025年の知財権 第2回

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2025年の作機

 

作機28号への仕事の依頼は簡単である。

音声と画面で作品の仕様を尋ねてくるので、答えていけばよいのだ。

 

落ちは悲劇か喜劇か?

主人公は、神、英雄、普通より優れた人、普通の人、劣った人のいずれか?

主題は何?

プロットは何?

・・・・・・・?

・・・・・・・・・?

 

これら対話で答えた項目、僕の知らないネットワーク経由で収集された素材、素材に係る物語など1万以上の次元の項目から、物語の構造と構造に収まる「文字という記号」が出来上がり、アウトプットされる。

 

落ち、主人公、主題、プロット、収集された素材、その物語などは、すべて個別のノードとして扱われ、それぞれの項目からは他の項目へと、あるいは別の層(隠れ層)のノードへと接続していく。

 

その隠れ層のノードは、さらに別の隠れ層のノードに接続していく。各ノードは、それぞれエネルギー関数をもっていて、それぞれに繋がれた他のノードからの入力によって活性化され、さらに他のノードに出力する。

 

最後の層のノードについては、その層の活性化されたノードが作る幾何学模様の美しさを評価し、創造スコアを出していく。

 

作家としての創造性は、その時代の価値観を反映し、時間に対して相対的ものであるから、情報収集して創造スコアも相対的に変化するようにするところが作機開発のポイントである。筆は相当に速く、1万文字程度のショート・ショートの作品に設定しておけば、3分で3作品が出来上がる。

 

まだまだ試作の段階で、3つに一つは、かなり創造性のレベルが低い印象だ。3つに一つは、それなりに満足できるレベルである。

 

僕の感性だけでの創造性判断では客観性に欠けるので、検証が必要であった。そうした検証の一つであるS氏賞に受賞したのだ。

 

弁理士に相談

僕は、20世紀末からAIのベンチャー企業にいて、自然語解析プログラムの開発に係っていた。その後、ITベンチャーブームに乗って、シリアルアントレプレナーとまではいかないが、21世紀の4分の1を食い繋いできた。この受賞を機に、作機に人生の後半を賭けてみる決心がついた。これからどうすれば、この作機のアイデアを最大限に生かせるか、考えてみたい。作機28号にコツコツと受賞作というホームランを打ち続けてもらうのも一手である。

ヒロタ特許事務所を訪ねた。所長弁理士であるヒロタ氏とは、20世紀末からの四半世紀に及ぶ付き合いである。ヒロタ先生は、ベンチャー、中小企業を顧客にしており、僕がいたAIベンチャーの立て直しに係ったことをきっかけに、次々とベンチャー立ち上げのための特許案件を抱えることになった多忙な弁理士である。開発中のAIが狙いの創作効果を発揮して、文学賞を受賞してしまったことから切り出した。

ヒロタ先生は言う。

「AIの作品で食っていくとは、それ自体ユニークな生き方ですね。いつまでも作機が書いていることを隠してはいられないでしょうから、作品の権利だけでなく、作機自体の権利も考えていく必要があります」

 

(第3回「AIの知能」に続く。)

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