バーチャル特許部開設によせて、知的財産法、まずは特許法の保護対象について、最近ニュースに頻出する人工知能に絡めて話をしたいと思います。人工知能は、5年後にはビジネスシーンで使われることが当たり前になって、人工知能を利用したビジネスの発明の特許出願が増えることが予想されるからです。近年の特許出願において、スマホを利用したビジネスモデルに関するものが大量に見られるのと同様の状況が生まれると思われます。
人工知能本体やスマホ本体の発明は、大手大企業や研究所にしかできないかもしれませんが、それらを利用したビジネスモデルの発明は誰にでも手が届くところにあります。そして、スマホのインフラを利用したフェースブックやラインがあっという間に成長したように、今後の人工知能の利用にすごいチャンスを感じさせます。

本題に戻りましょう。

特許法の保護対象

特許法の保護対象は、どの国でも発明です。日本国の特許法では、「自然法則を利用した技術思想の創作のうち高度なもの」と定義されています。そして、当業者にとって新規性と進歩性が認められる発明は、特許が認められて、法的に守られることになっています。

ところが、私が得意とするコンピュータ・ソフト分野では、前世紀から2000年代にかけて今までになかったアイデアに富んだコンピュータシステムの発明の多くが特許拒絶の憂き目に遭いました。「自然法則を利用したものとは言えない」というのが拒絶の理由でした。要は、特許法の保護対象ではないということでした。

さて、人工知能の分野で起きつつある発明は、単なるコンピュータ・ソフトと同様の問題を引き起こす可能性を私に感じさせます。最近絶えて久しい「自然法則を利用したものとは言えない」という拒絶理由を再び目にする機会が増えるかもしれません。

人工知能の発明は、特許対象としての適格性がないかもしれない、といったらショッキングでしょうか? ビジネスモデル特許と言われる発明の多くが、特許にならなかったことをご存知の方なら、あー、又この問題が繰り返されるのか、と納得されるかもしれません。
「ビジネスにおいて人がやっていたことをコンピュータにやらせるだけでは、ハードとしてコンピュータを備えているとしても、全体として自然法則を利用しているとは言えない。これによりビジネスの効率が上がるとしても、それはコンピュータ化により当然に予期される効果に過ぎない。」なんで具合に特許庁の審査官に拒絶されてしまった経験のある方もおられることでしょう。

これは、ビジネスモデル特許を拒絶する理由としては定番のフレーズです。人工知能、特に人と同じように考えるような汎用人工知能が実現されたとしたら、
「社会生活において人がやっていたことをコンピュータにやらせるだけでは、ハードとしてもコンピュータを備えているとしても、全体として自然法則を利用しているとは言えない。これにより社会の生産性が上がるとしても、それはコンピュータ化により当然に予期される効果に過ぎない。」と片付けられてしまうかもしれません。

これには、定番の対応があります。「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」発明であることを主張すればよいのです。

次回は、特許庁審査官の拒絶理由を回避するために、どのように主張すれば、あるいは、出願書類に予め記載しておいた方がよい主張の根拠となる記載事項について、検討していきたいと思います。

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