プロフィール

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栗田 洋(くりた ひろし)
栗田特許事務所 代表弁理士

早稲田大学政経学部経済学科 1985卒

弁理士試験2011合格(選択科目:電磁気学)

1994年冬
「栗ちゃんごめん、代わりに特許書いて。バイクで怪我しちゃって書けないから」
キャノンをスピンアウトしたK氏の依頼により、突然に初めての特許出願の書類を書くことになりました。案件は「遺伝子増殖のためサンプル遺伝子片を迅速に加熱および冷却することができ、そして、サンプルの精密温度制御が可能であり、かつ、温度分布精度の良好な加熱冷却器」です。当時ブームとなっていたバイオテクノロジーには欠かせないツールでしたが、性能の良いものが市場にはありませんでした。

90年代の前半は、熱中していた自動車レースの経験や感覚を生かして、シミュレーターや運転技術を評価するシステムをビジネスにできないか、と考えて、特許のスペシャリストであるK氏に相談している時期でした。
K氏の怪我が切っ掛けで、初めて特許出願のための書類をすべて書くこととなりましたが、最初から体裁の整ったものを書くことができました。文章が分かり易さ、論理の飛躍が少ないなど、発明者自身のK氏が書くよりも、適切に仕上がったと記憶しております。弁理士を利用する利点がこんなところにあるのかもしれません。

このことが切っ掛けとなり、K氏が起こしたバイオベンチャーに参加して、当時多角化戦略でバイオに注目していた石油会社、鉄鋼会社にアクセスして、業務提携の企画を持ち込んでおりました。この頃、銀行系のベンチャー基金(三和ベンチャー)から500万円のお金をいただくことができました。同基金の社長交流会にも参加し、人脈を広げる活動もしておりました。ここでAIベンチャーの社長様と懇意になり、特許で困っているという相談を受けました。相談内容は、社長の頭の中にある「シンクソフト」の概念を理解して書いてくれる弁理士が見つからないということでした。そこでK氏の会社と兼務する形で、このAIベンチャーにも参加することになりました。

1997年から世紀末にかけて、日本語を理解し、適切な応答をしてくれるコンピュータシステム「シンクソフト」の開発にも、AIの構文解析及び発話理解のための辞書担当として参加しました。一方で、特許担当として特許出願業務をすべて任されておりました。このようなバックグランドですので、今のAIやロボットに対する社会の期待感の高まりにすごいビジネスチャンスを感じ取っています。

2000年代前半は、ITベンチャーブームに乗ってケータイキャリアの公式サイトでスケジュール帖スタイルの情報配信をするベンチャーに特許担当として参加し、年間40件を超える特許出願を一人でこなしました。この時期に大量の仕事を効率的にこなすノウハウを身に着けたのではと思っております。

2000年代中盤は、大学発ベンチャーブームで立ち上げた位置情報システム会社に、特許担当として参加しました。特許担当ではありましたが、湘南地域において、地域情報を配信する携帯サイトを期間限定でオープンし、コミュニティーFM(レディオ湘南)の放送と連携させる実証実験を自らの企画でやらせて頂きました。

2012年4月から特許事務所を立ち上げ、現在に至っています。業務は、センサーシステム、様々な機器の遠隔操作システムなどが多いですが、コンピュータや通信分野における技術を組み合わせたビジネスモデル特許的な案件も引き受けております。

最近は、AGI(汎用人工知能)に興味を持っており、法律の専門家の立場から、人工知能学会の活動にも参加しております。このような技術は、社会のあらゆるところに影響を及ぼすと考えられます。AGIのコア技術の開発は、大手や優れた研究者にしかできないかもしれませんが、その影響を適用して自社ビジネスを優れたものとすることは、中小企業や個人発明家にも開かれています。

今後も、技術の動向を先取りし、ベンチャーの経験を生かして、新しい技術が5年後どのようになっているのかを考え、ビジネスが本格化したときに役立つ知的財産を提供したいと考えています。