知的財産法全般 の記事一覧

chatGPTを試す(2)

前回、chatGPTとの質疑応答を試した結果として、以下のようなことが分かりました。

<前回の検証結果>

実際には存在しない技術文献を根拠に正解っぽい回答を提示してくる。手の込んだ文献番号と文献タイトルを提示しているので、実際にDBをサーチしてみないと、本当にそんな文献が存在していると騙されてしまう。

事実との整合性よりも質問に対する回答の正解っぽさを追求しているようなある種の「創作」をするchatGPTですが、米国では「AIが自動生成したモノ」の著作権登録のガイドラインが発表されたようです。登録申請の際に「AIが自動生成した部分」と「人間が創作した部分」を分けて明記するよう求めるそうです。

なるほど。chatGPTを使った部分を自己申告させるというわけです。米国の判例が積みあがるのが楽しみです。

私の記憶によれば、米国の法改正で何十年も前に著作権マーク「©」が必須ではなくなったのですが、著作権侵害訴訟を起こすには著作権局への登録が必要です。

質疑応答2-1

これを題材にchatGPTとの質疑応答を試してみました。

<質問2-1>

米国でいつから著作権侵害訴訟の提起に著作権局への登録が必要になったのですか

<回答2-1>

米国における著作権侵害訴訟の提起に著作権局への登録が必要になったのは1978年の著作権法改正によってです。この改正によって、著作権の保護期間や著作物の種類が変更され、著作権侵害訴訟の提起においても著作権局への登録が必要になりました。著作権局への登録は、訴訟を起こす前に行われることが一般的で、登録が完了すると、著作権主権者は法的保護を得ることができます。ただし、登録をしなくても著作権は成立しますが、訴訟を起こす場合には登録が必要になることがあります。

質疑応答2-2

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chatGPTを試す

少し長くなりますが、chatGPTに下記の質問をしてみました。

質疑応答1

<質問1>

特許第4734471号の「動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、 前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、 前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、 前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有し、 前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、 前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する ことを特徴とする表示装置。 」の先行技術文献を教えて

chatGPTの回答は以下の通り

<回答2>

特許第4734471号の先行技術文献は、以下の文献です。

US Patent Application Publication No. 2006/0098466A1, “System and method for overlaying comments onto a video display”, filed on November 3, 2004.

US Patent Application Publication No. 2006/0028904A1, “Method and apparatus for displaying commentary on video”, filed on August 3, 2005.

US Patent Application Publication No. 2005/0283279A1, “Method and apparatus for displaying comments on a video display”, filed on June 10, 2005.

上記の先行技術文献においても、動画再生中にコメントを表示する方法が提案されています。特許第4734471号との違いや類似点については、特許の請求項や説明書に記載されている詳細な技術内容を比較することで確認できます。

質疑応答2

それではと、類似点と違いについて尋ねてみました。

<質問2>

先行技術と特許第4734471号との類似点と違いをリストアップして

<回答2>

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ビジネス戦略本の読み方

数年前に熱中したビジネス戦略本「オープン&クローズ戦略(小川紘一著)」を再読しています。きっかけは、「情報経済の鉄則(カール・シャピロ他著)」という1990年代の戦略本を手に取ったことでした。

2つの本で語られる知的財産管理の戦略は、ほぼ共通しています。

<攻守をバランスさせての収益最大化戦略>

自社のコア技術を守るための守りの知財管理手法と、自社のコア技術を普及させるための攻めの知財管理手法とをバランスさせて行うことで市場から得る利益を最大化するという戦略です。

攻めの知財管理手法を使うと、その商品の市場は成長するが、一方で商品のコモディティ化が進み、利益率が低減する。

守りの知財管理手法を使うと、その商品の市場成長が遅れるが、一方で競合商品を抑え、利益率を高く維持できる。

だから、2つの手法をミックスした利益最大化パターンを作りましょうと書かれています。ここまでは、異論はないし、日々の仕事に生かしたいと思いますが、冷静に考えると当たり前の手法です。

<解釈次第の事例>

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AIは弁理士の仕事を奪うのか?

10年~20年後に80%以上の確率で弁理士もAIで代替される!

 

中央公論4月号の特集記事で取り上げられた英オックスフォード大学と野村総研との共同研究の試算ではこのようになっています。

 

弁理士の主要な仕事が、法律や審査基準に基づく決まり事や形式を満たす知識を要求している点に着目して試算されたのでしょう。

 

実は、私は「AIが仕事をやってくれるなら、こんないい時代はない」と密かに思っておりました。元々、AIのベンチャー企業に在籍していたこともあり、自らの仕事をルーティン化して、仕事の質とスピードを上げたいと考え、仕事の手順、計画、時間管理にかなりの労力を割いています。そうした労力の成果をAIに吸収してもらい、私には思いも付かなかったノウハウを生み出してほしいものです。

 

高確率でAI代替ができるというなら、今の内にAIへの代替を前提とした特許事務所を考えてみるのも悪くありません。

 

弁理士業務のAI代替でまず考えたこと

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©マークを付けると何かいいことありますか?

「©マークを付けると何かいいことありますか?」という質問をよく耳にします。

 

©マークを付けて、このコンテンツをアップした年と名前を入れておくと、それを使いたい人から連絡がきて、何かのチャンスに繋がるかもしれませんよ。ともかくも、このコンテンツを勝手に使わないでねという意思表示にはなります、というのが実用的な答えです。

 

「©マークを付けないと、著作権を主張できないですか?」

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著作権が生まれる時

「©マークがついてない画像は、使ってもいいんですか?」

 

専門家としての標準的答えは、「安易に使ってはダメです。著作権フリーかどうか確認しましょう。」といったところでしょう。これは、実用的答えになっていないですよね。実用的な確認方法がないのですから。

 

ところで、下の写真は、著作権の観点から使っていいと思いますか?

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バーチャル特許部とは?

 

「バーチャル特許部って何ですか?」

「どういう意味の言葉ですか?」

 

名刺の「バーチャル特許部(登録商標)」などと印刷しているもので、頻繁に受ける質問です。

 

NHKの朝ドラ「あさが来た」の加野屋が時代の変化に対応して両替商から銀行に代わっていくように、バーチャル特許部も知財部のないベンチャー企業の知財コンサルティング業務から、知財のブログへと変貌してきました。たぶん、5年後は違う顔を持っていることでしょう。

 

加野屋がお金を扱うというコンセプトを継続しているように、知財を扱うというコンセプトさえ一貫してさえいれば、いろいろな顔を持ってよいと思っています。

 

 バーチャル特許部員 七変化

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中小企業の知的財産活用(3)

中小企業の知的財産活用(3)

 

前回、8つの知的財産活用パターンをご紹介しました。

この中で何か一つを取るならば、断然、知的財産の「見える化」です。ここがすべての始まりであり、ここが出来ていれば色々な可能性にチャレンジすることが出来ます。

 

先週末に国際ロボット展 http://biz.nikkan.co.jp/eve/irex/ を見てきました。ここで知的財産の見える化を上手にやっている中小企業として、しばしば紹介される株式会社ナベルがブース出展をしていることを見つけました。

ロボット写真

ロボット技術としての蛇腹

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中小企業の知的財産活用(2)

中小企業の知的財産活用(2)

 

前回、知財活用とは、知的財産を「見える化」することだと申し上げました。知財に形をつけて見えるようにすると、社員さんが自社技術にプライドが持てるようになり、社内が活性化するという話でした。その文脈で「下町ロケット」における「佃プライド」や佃製作所の社員一丸となった強さも理解できるわけです。

 

これは知財活用の一例で、すべてではありません。今回は、広い視野から知財活用を俯瞰したいと思います。

 

8つの知的財産活用パターン

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中小企業の知的財産活用

中小企業の知的財産活用

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「下町ロケット」(池井戸潤著)が、2度目のテレビドラマ化されて好評を博しています。帝国重工という大企業を相手に中小企業の佃製作所が特許権を盾に互角に渡り合っていくストーリーには、感動させられるものがあります。

 

中小企業の経営者の方々にも、このドラマに大変感化されて、このドラマで知的財産の大きな可能性に思いを馳せた方がたくさんおられると思います。ただ自社の経営の中で知的財産を活用することを考えたとき、特許権とか商標権と経営との係りにリアリティを感じられない方が大半なのではないでしょうか?

 

自社では取得している特許はまだないとか、数件しか特許を取得していないといった中小企業が特許権を巡ってのドラマチックな係争を展開するというのは、私にもリアリティが感じられません。

 

しかし、「佃プライド」には、ドラマの世界を離れても知的財産との関係でリアリティのある内容があります。今回は、知的財産を活用して「佃プライド」的なものを社内に芽生えさせようという提案をさせていただきます。

 

 知的財産活用と中小企業のプライド

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