前方後円墳を墓としてみるならば、前方後円はデザインですが、視点を変えると発明になります。
関東には珍しいとされる前方後円墳が逗子市と葉山町との境の山にあります。発想の源泉を求めて山登りをしてきました。
前方後円墳を墓としてみるならば、前方後円はデザインですが、視点を変えると発明になります。
関東には珍しいとされる前方後円墳が逗子市と葉山町との境の山にあります。発想の源泉を求めて山登りをしてきました。
前回、特許庁からの拒絶理由通知書を米国風にファースト・アクション(First Action)と呼んだ方が実態に即していると述べました。出願の権利化という観点から拒絶理由通知書を別の呼び方をしてみたいと思います。
「拒絶されたんじゃ、もうだめですかね?」
クライアントの担当が、肩を落とし気味に質問されました。
初めての特許出願をしたクライアントに、特許庁からの拒絶理由通知書をお伝えするときに必ず起きる反応です。
その内容は「拒絶」とは程遠いものも含むことを考えると、米国風にファースト・アクション(First Action)と呼んだ方が実態に即していると思います。
特許に関心を寄せる方々の多くは、特許戦略について書かれた本を読まれていると思います。
うまいこと考えるものだ。しかし、この戦略を自社に使えるのだろうか?
特許訴訟を題材としたスリリングな展開の小説を読んだ後と同様の感想を感じられる方も多いと思います。「特許がすごい効果を発揮することがあるけれど、自社には、当てはまらないのでは?」という感想ですね。
そこで、実用的な特許戦略「本」の読み方を考察してみたいと思います。
前回、「バランスのとり方は、そのアイデアの先行技術、市場性、そして戦略により、変わってきます」と申し上げました。先行技術としては、丸い鉛筆と世界最初の板状鉛筆だけを考慮して、実現性があるならば自由に権利範囲を描ける場合の話をしました。
今の時代では、こんなに自由に権利範囲の境界を引ける技術分野は、非常に少ないです。
先行技術による制約や市場性を考慮して、自社の発明のポジションを「見える化」しないと、文書表現上の上位概念を仕上げても「書いてみるだけ」の特許出願となる可能性があります。
特許の権利範囲の書き方で損をした例ばかりが、ドラマ等で紹介されて、この部分ばかりに意識が向かう発明者も多いです。
そこで、広い特許を狙うための考え方を考察してみたいと思います。
前回、良い特許とは「広い特許と強い特許との間で、拒絶や無効のリスクと市場を獲得するチャンスとのバランスが取れた特許」と申し上げました。
丸い鉛筆しか市場にない時に、鉛筆が転がって困ると考えた発明者が「六角形の鉛筆」の鉛筆を発明した時に、どういう風にバランスをとっていくのか、考えてみたいと思います。
良い特許出願
「丸い鉛筆が使われている世の中で、六角形の断面を持つ鉛筆を発明したら、どのような特許を狙いますか?」
広い特許を説明する例題として有名です。
「六角形の断面を持つ鉛筆」では、勿体ないということで、講師が解説をしていきます。
この発明の本質は、転がらないことにある。だから、「多角形の断面を持つ鉛筆」とか「重心が断面の中心にない鉛筆」とか様々な書き方あります。広い概念で考えましょう、というわけです。
広い概念で特許を取得しておけば、他社の特許回避を防ぐ良い特許になります、という落ちになる話です。
ところで、本当にそうなのでしょうか? 現状販売されている鉛筆のほとんどは、円断面か六角形断面で占められています。
例題のように丸い鉛筆が使われている世の中で「六角形の断面を持つ鉛筆」の特許を持っている会社にとって、ライバルが五角形とか、七角形の鉛筆とか売れそうにない鉛筆製造に投資してもらえる状況はむしろ好ましいようにさえ思えます。ライバルを厳しい状況に誘導するというのも一つの競争戦略ですから。
さらに広い特許は、拒絶や無効になりやすいという問題もあります。
中小企業の知的財産活用(5)
「せっかくヒットしたのに特許を他社に使わせてしまうなんて、もったいない!
うちやったら、新工場を建てて、大増産ですわ。」
前回の競合とつながる「橋」としての特許活用を読んで、このように心の中で呟いた経営者の方もおられると思います。今回は、新工場を建てて、大増産から始まった「橋」の事例です。
中小企業の知的財産活用(4)
「うちが、特許権を取って、何に使うんですか?」
経営者の方々でこのようなストレートな疑問を抱いている方も多いと思います。
特許法を学び始めた頃、よく問われる「特許権の本質は何ですか?」という質問と根っこで共通する質問です。
法律の試験で、あるいは、法律の専門家として正解とされるのは、「排他権」です。
つまり、自社の技術を模倣されないため、市場を独占するため、ライバルの参入を防ぐ参入障壁の機能が本質である、とするのが特許法の考え方です。
排他権と言われても、「うちは、ライバルを追い出したいような市場もないし、自社技術は外からわからないから他社は真似できませんよ」という経営者の方もおられると、思います。特許権をライバルに敵対する「壁」としてしか活用できないと、お考えでしたら、もったいないような気がします。特許権は、ライバルを追い出すためにも使えますが、仲間なってもらうためにも使えます。
知的財産法の保護対象(2)特許法
前回は、特許法の保護対象ではないということを理由に拒絶の憂き目に遭うコンピュータシステム発明、特にビジネスモデル特許の話でした。今回は、その拒絶理由を回避するために、どのようにすれば、よいのか、という話です。
今の特許審査基準から「発明」に該当しないものとされる「自然法則を利用していないもの」の説明を抜粋すると、以下のとおりです。
<自然法則を利用しないもの>
請求項に係る発明が、自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取決め(例えば、ゲームのルールそれ自体)、数学上の公式、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用しているとき(例えば、ビジネスを行う方法それ自体)は、その発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない。
逆に、発明を特定するための事項に自然法則を利用していない部分があっても、請求項に係る発明が全体として自然法則を利用していると判断されるときは、その発明は、自然法則を利用したものとなる。
ここで、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるというのが、特許庁の見解です。私達弁理士は、「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」いることを主張する根拠になる事項を、予め特許出願書類から抜き出して、特許庁審査官の拒絶理由に打ち勝つ主張を組み立てるところで腕が試されてきました。
最近では、ベテラン弁理士であれば、「自然法則を利用した技術思想の創作とはいえない」などと言わせない出願書類の書き方をしていると思われます。
前に述べた特許審査基準では、その書き方をもう少し突っ込んで述べています。
「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう。
そして、上記使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということができるから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されている」場合には、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」である。