10年~20年後に80%以上の確率で弁理士もAIで代替される!
中央公論4月号の特集記事で取り上げられた英オックスフォード大学と野村総研との共同研究の試算ではこのようになっています。
弁理士の主要な仕事が、法律や審査基準に基づく決まり事や形式を満たす知識を要求している点に着目して試算されたのでしょう。
実は、私は「AIが仕事をやってくれるなら、こんないい時代はない」と密かに思っておりました。元々、AIのベンチャー企業に在籍していたこともあり、自らの仕事をルーティン化して、仕事の質とスピードを上げたいと考え、仕事の手順、計画、時間管理にかなりの労力を割いています。そうした労力の成果をAIに吸収してもらい、私には思いも付かなかったノウハウを生み出してほしいものです。
高確率でAI代替ができるというなら、今の内にAIへの代替を前提とした特許事務所を考えてみるのも悪くありません。
弁理士業務のAI代替でまず考えたこと
AIのユーザーの立場から考えたことは、人への依存度が高く、非効率に落ちていても外からわからない特許明細書作成をAIに任せられないか、ということでした。
いきなり感がありますが、本命的部分だと考えています。業務導入の順番から言えば、最初は期限管理をまず考えるのでしょうが、多くの期限管理ソフトですでに実現されているので、このような管理業務は、機会があれば、特許事務所AI化の手順を考えるときに議論したいと思います。
AIに特許の出願書類を書けるか?
出願書類は、出願人とか発明者などの書誌的情報を記載した「願書」、発明の背景や実施例などを記載した「明細書」、権利範囲を記載した「特許請求の範囲」、発明のインデックス情報となる「要約書」そして「図面」から構成されています。
出願書類作成の流れは、弁理士によって順番が異なるかもしれませんが、
①発明を特定すること、②先行技術を調べて、発明の位置づけを把握すること、③特許請求の範囲を組み立てること、④図面を作成すること、⑤明細書を作成すること、⑥要約書を作成すること、そして⑦願書を作成することといったところです。
①発明を特定すること
発明者からの依頼書やインタビューの議事録から、発明の目的、構成、そして動作・機能を特定する業務です。
技術的にはインタビューとかをAIがやってくれてもよいのですが、クライアントの心理的受け取り方が未知数です。テレプレゼンスによる弁理士AIが、同行してもよいのですが、人に代替するのは営業的に難しそうです。
依頼書や議事録を入力して、目的と構成と動作・機能をテキストとして、抽出してくれれば、十分に戦力になります。
②先行技術を調べて、発明の位置づけを把握すること
大量の特許文献DBがあって、クラウド利用ができる環境が整っていますから、弁理士AIの活躍が最も期待される業務です。
上記自動抽出された目的と構成と動作・機能のテキスト情報を入力して、分析結果を文献リストだけでなく、特定された発明との類似度を俯瞰する特許マップの形で出力してもらえると申し分ないです。
③特許請求の範囲を組み立てること
特許マップの中で位置づけられた発明と類似する特許文献から、要件を特定する言葉を抽出し、骨格だけの箇条書きのラフクレームを自動生成してもらえると、大変良いです。
クライアントのビジネス的な観点から必要な要件もあり、②で生成された特許マップの観点だけで決められないので、AIへの情報伝達の手間を考えると任せづらい業務です(クライアントもAI化なら、AI同士で情報交換してクレームを決めてもらってもよいかな?)。
④図面を作成すること
クレーム要素を網羅した図面を、クレーム作成と同じ要領で、特許マップの中で位置づけられた発明と類似する特許文献から抽出した図形部分を基にポンチ絵を自動生成してもらえると、大変良いです。
⑤明細書を作成すること
一番期待していない業務がここです。論理的にバランスの取れた文章というよりは、中間処理や特許紛争になったときにサポートできる記述を織り込んでいくなど思惑が入るところだからです。
さらに言えば、案件によってターゲットとなる人が変わるので、権利の境界線を明確にし、客観的な発明構成をバランスよく書けばよいとも思っていません。
⑥要約書を作成すること
弁理士AIくんにお任せします。
⑦願書を作成すること
ちょっと不安ですが、クライアントの名前を打ち間違うなどの誤りが無さそうなので、期待が大きいです。
こうしてみると、かなりの戦力になりそうな予感があります。
この企画について良いネーミングを思いつきました。
勘のよい読者はもうお分かりですね。