特許に関心を寄せる方々の多くは、特許戦略について書かれた本を読まれていると思います。
うまいこと考えるものだ。しかし、この戦略を自社に使えるのだろうか?
特許訴訟を題材としたスリリングな展開の小説を読んだ後と同様の感想を感じられる方も多いと思います。「特許がすごい効果を発揮することがあるけれど、自社には、当てはまらないのでは?」という感想ですね。
そこで、実用的な特許戦略「本」の読み方を考察してみたいと思います。
特許の役割に注目する読み方
特許戦略をざっくり言ってしまえば、製品を構成する技術を分解して、守る部分と開放する部分に分けて、特許を当てることです。
特許戦略で頻出する「オープン&クローズ戦略」の場合、クローズは守る部分に、オープンは開放する部分になります。
特許戦略「本」に登場する製品は、いろいろな技術から構成されていて、自社ですべての技術要素を自社特許で守ることができないケースがほとんどです。
特許戦略というのは、ライバルとの関係で自社の「売り」となる部分に特許を当てて、守りの特許として、その製品分野の市場拡大のために有用な部分に特許を当ててライセンス或は無料開放していくことです。
こういう製品のこういう部分を特徴にして守り、こういう部分は市場拡大のために開放するのだ、という観点から見ると、特許の活用の仕方を学べると思います。
そうすると、「自社が開発した新製品は、まだ製品分野として確立していないから、守りの特許よりも、普及のために開放する特許活用を学ばなければならない」というような意識で特許戦略「本」を読むと、開放するための特許の使い方が見えてくると思います。
「テスラモータースが 電気自動車に関する特許を開放する」といったときに、テスラは電気自動車という製品分野を確立させようとしているのだろう、というようなことが読めてきます。そして、トヨタが少し遅れて、燃料電池自動車に係る特許の開放に踏み切りました。トヨタは、電気自動車よりも燃料電池自動車を普及させたい、という意図が見えます。
ここでは、電気自動車vs燃料電池自動車という戦場を思い描いて、特許開放という手を打っているわけです。